以前根の先に膿が溜まって歯ぐきが腫れたので、根の先をとって膿をなくす手術を受けましたが 最近また同じ場所が腫れてきました。次は抜歯しかないのでしょうか?

手術をした歯でも、抜歯しなくて済む場合があります。

根の先の病気は、根の中に存在する感染源をきれいに清掃して詰め物をする治療を行うことで治癒するのですが、入り組んだ場所に細菌が住み着いたり、解剖学的に複雑な根の形態や治療の限界等により、通常の治療では回復しない場合や、根の治療が行えない(根の中に太く長い土台が入っていて外すのが危険等)場合、行われる手術が歯根端切除術です。

 

 

 

 

 

 

 

 

この手術は根の先の部分を取り、根の先の部分に詰め物を行い蓋をして、根の中にいる細菌を閉じ込める手術です。

従来の術式は主に、根尖掻爬(根の先の病変のみの除去)、根尖切除(根の先の部分を除去)、根尖逆充填(根の先を除去し、根の先を充填)とあるのですが、どれも裸眼で行うため切除部の精査が困難であり、器具も大きいため、根の先の形態修正も不十分になりやすく、また封鎖に用いる材料も十分な封鎖を得られるとは言い難いものでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり、根の中の感染源を十分に封じ込めることが難しく、従来の歯根端切除術の成功率は50%前後で、さらに治癒しなかった時に行う再手術の成功率は35.7%とあまり高くなく、一度歯根端切除術を受けて治癒しなかった場合は抜歯を選択せざる得ませんでした。

これに対し現在の主流である術式は、マイクロスコープを用いて観察するため切除部をよりきちんと精査、処置することが可能となり、専用の小さな器具を用いるため、根の先の形態修正も精度の高いものとなり、封鎖に用いる材料も非常に優れたものが開発されています。この方法で行う再手術の成功率は90%以上と良好な結果が得られるため、最初の手術の問題が明らかな場合はマイクロスコープを用いた術式で歯を保存できる可能性があります。

一度手術を行ったところが再発してきたということですが、まずは再発の原因をしっかりと診査診断することが大切です。

1.感染源の取り残し(見落とし)

従来の裸眼で行なっていた手術の場合、感染の原因となっている部位を十分に確認、除去することが困難で、結果として再発している。

2.根管の封鎖が不十分

根尖に蓋をする材料の種類、処置時のエラーによって十分な封鎖が得られず、細菌が漏洩して再発している。これらが原因で再度の手術により改善できると判断された場合、再手術が選択されると思います。

3.歯冠側からの細菌漏洩

被せ物の隙間から細菌が入り込み、根尖に達したことで再発している。この場合被せ物を外して細菌の感染経路を洗浄して緊密に封鎖する根の治療が選択されると思います。

4.歯根破折

 根にヒビが入りそこから細菌が漏洩して再発している。この確定診断は、完全に分離しているようなものを除き直接ヒビを目で確認するしかなく、診断的な外科処置を行う場合があります。明確な破折が確認された場合は残念ながら抜歯となることが多いです。

5.歯周病との複合感染

歯周ポケットが根尖病変と交通し、根の先以外から細菌感染し再発している。歯周病と根の病気それぞれの診査が重要になります。両方が考えられる場合、根の治療を先に行い、それで改善されない場合、歯周病の治療を行なっていきます。

いくつかの例を挙げて処置方針を示しましたが、再発(あるいは新たな病変)が見られた場合、原因を精査することが最も重要です。根の治療の専門医は確実な診断を行うために様々な診査を行い治療方法を選択しています。

<症例提供:青山登先生>

他の治療の選択肢、再手術の妥当性などをお聞きの上、納得のいった治療方法を選ばれることをお勧めいたします。

 

執筆者:新海 誠(PESCJ11期生)