治療が必要な歯があるのですが、一人の先生に治療してもらうのと、複数の専門医に治療してもらうのはどちらがいいのですか?

今までは一人の歯科医師に治療を全て任せることが多かったと思いますが、治療水準が向上した現在、日本ではあまり馴染みがありませんが、『インターディシプリナリーアプローチ』という考えが欧米では広く浸透しています。

インターディシプリナリーアプローチとは

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『インターディシプリナリーアプローチ』とは、主治医となる歯科医師が口腔内全体の治療計画を立案し、それに基づき各分野に特化した専門医が主治医の指示に従い、各分野の治療を行う治療のかたちです。

「インターディシプリナリーアプローチ」の例を挙げますと、下記の症例では、深いむし歯により根管治療が必要になり、最終的に全部冠による補綴治療をしました。

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(症例提供:大野純一

(丸印の部分が歯肉の中のむし歯。このままでは治療ができません)

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(歯周治療担当:大野純一、歯内療法担当:高橋宏征

(歯周病専門医によるクラウンレングスニング、歯内療法専門医による根管治療を施行)

この治療には、

1 歯周治療

2 根管治療

3 支台築造 (土台の作製)

という治療ステップを経て、今後

4 補綴治療 (被せ物の作製)

を予定しています。

この症例においては歯周病専門医が歯肉の中まで進行していたむし歯の治療のため「歯肉の手術」を行い、「根管治療」「支台築造」を歯内療法専門医、最終補綴治療は主治医が行う予定です。

今までは、一人の歯科医師が治療を最初から最後まで完遂することが多いと思います。

しかし、インターディシプリナリーアプローチの考えが徐々に浸透しており、上記の症例のように、一つの治療に対して複数の歯科医師が介入することがあります。

日本では、歯列矯正は一般歯科と区別して認識されている方が多いと思います。また、医科の範囲では、当たり前のように内科や眼科と区別されるように、欧米では歯科も細分化されています。

インターディシプリナリーアプローチの目的

インターディシプリナリーの目的は、一口腔単位を総合的に捉え、歯周治療、歯内療法(根管治療)、補綴治療といった専門性の高い治療をそれぞれの専門医が分担して行うことにより、精度の高い、より満足度の高い医療を提供することであり、最上の結果を追求したチーム医療です。

では、専門医による専門性の高い治療とはどういったことでしょうか。

日本での歯科治療は、健康保険との兼ね合いから全ての治療をひとりの歯科医師で行うことが一般的です。保険診療では、根管治療から歯周治療、補綴治療と、その仕事の範囲は多岐にわたり、平均的な治療を目指した治療となります。

比較して、専門医は、たとえばわたしたちの分野でいえば、根管治療を代表とした歯内療法学の分野のみを、日々診療しています。

その、一般開業医と専門医の日々の仕事の集中度、密度の差が、専門医による専門性の高い治療として、治療の密度の差として結果に現れます。

そのような、より密度の高い治療を積み重ねて、最良の結果を求めるのがインターディシプリナリーアプローチです。

利点と欠点

インターディシプリナリーアプローチの利点と欠点を考えてみます。

利点

・各専門分野で、より精度の高い治療を受けることができる。

・十分な時間を確保して診療に臨むため、治療回数が少なく済むことが多い。

・治療の失敗の確率を減らすことができる。

・セカンドオピニオンのように、複数の歯科医師による協同的な方針による治療を受けることができる。

欠点

・複数の医院への通院が必要となることがある。

・専門性の高い治療となるので治療費が高額になる。

上記のようなことが挙げられますが、最も特徴的なのは、「各専門分野で、より精度の高い治療」です。

その恩恵と、上記の欠点を照らし合わせて、専門医による治療を希望するのか決めるのがいいのではないでしょうか。

まとめ

インターディシプリナリーアプローチは、より質、満足度の高い医療を追求する、合理的で科学的なシステムであるといえ、より最上を求めるならば、非常に優位性は高いとわたしたちは考えております。

現在、日本の歯科治療の80%が、一度治療した部位のやり直しの治療といわれています。

長期的な安定した結果を求めるのならば、「インターディシプリナリーアプローチ」による専門医による治療を受けられるのをお勧めいたします。

 

執筆者:池田洋之PESCJ8期)