今回は、埼玉県さいたま市に勤務されている柴田 凱人先生のご紹介となります。
・早速ですが、先生のご勤務されている医院はどちらになりますか?
ユモトデンタルクリニックで勤務しております。
・ユモトデンタルクリニックはどちらに所在した医院ですか?
埼玉県さいたま市で最寄駅は大宮駅になります。大宮駅西口から徒歩8分のロケーションとなります。
・埼玉県の中ではかなりの都市部の駅ですよね?通勤は大変ではありませんか?
大宮駅はJRや私鉄を合わせて14路線乗り入れているため、交通の便が非常によくストレスなく通勤できています。
・それだけ交通の便が良いところですと患者さんはどのような地域からいらっしゃるのですか?
多くの患者さんは埼玉県内からいらっしゃいます。
またさいたま市に限らず、鴻巣市や熊谷市あたりから来院される患者さんもいます。
・アクセスが良いのは素晴らしいですね。先生がユモトデンタルクリニックに就職した一番の理由はどんなことでしたか?
一番の理由は歯内療法専門医院で実際に仕事をしたてみたかったからです。
今までは一般治療を行いながら歯内療法を行ったり、非常勤で歯内療法のみを担当したりという経験はあったのですが、歯内療法専門医院に勤めたことはありませんでした。
歯内療法専門医院は一般的な歯科医院とは違い、基本的には他の歯科医院から患者さんを紹介して頂くことで初めて診療を行うことができます。
紹介元の先生方から大切な患者さんをお預かりしていますので、質の高い治療を提供するのはもちろん、その後の補綴処置がスムーズに行えるように報告書を作成させて頂いたり、綿密にコミュニケーションをとることも非常に重要になります。
ユモトデンタルクリニックで勤務するようになってから紹介元の先生方とのコミュニケーションの重要性をより強く感じるようになりました。
だからこそ、ユモトデンタルクリニックで勤務することができて本当に良かったと思っております。
・紹介元の先生方とのコミュニケートは具体的にどのようなやりとりを行なっていますか?
基本的には治療後や予後観察後、初診後などに報告書を作成して紹介してくださった先生宛に郵送しております。
私が特に意識していることはかかりつけの先生の元に患者さんが戻った時にスムーズに次の治療に進めるようにすることです。
歯内療法専門医院で働く前は問診時の細かいニュアンスや患者さんの気にされていることは自分の中で覚えておけば大丈夫でしたが、その内容を一切聞いていない紹介元の先生が混乱しないように報告書を作成するよう心がけております。
・なるほど、自由診療の専門医院の強みの一つであるカウンセリングに時間をかけることで、患者さんの真の望みを確認したり、本音、真の望みや小さな不安など時間をかけて知り得た情報を紹介元の医院と共有することができるわけですね。患者さんを中心に置いたインターディシプリナリーアプローチを心がけているわけですね。
充実した診療をされていらっしゃるようですね。
さて、柴田先生が歯科医師を目指したきっかけはどのような理由ですか?
私の叔父が歯科医師をしていたのでその影響が大きかったです。
子供の頃、虫歯になってしまった時に叔父に痛みもなく、スムーズに治してもらったのが本当に印象的でした。
・歯科医師の仕事、歯科医師の社会の役割、に憧れた部分があったのですね。学生時代はどのような歯科医師像をイメージされていましたか?
臨床実習が始まる前までは専門性は持たずにGPになりたいと漠然と思っていました。
私自身も歯科治療を受けるのは得意ではなかったので、患者さんの困っていることに寄り添い、解決できるような安心感のある歯科医師になりたいと考えていました。
臨床実習が始まると実際に臨床の現場に出ていろいろな診療科を周りながら勉強をしていきました。
私の母校である昭和大学の歯内療法科では全てのユニットに歯科用顕微鏡とモニターが付いていたので治療のアシストや見学が楽しかったのを覚えています。この頃から歯内療法に興味を持ち始めていました。
・卒業する頃には朧げながらも方向性は決まってたんですか?
卒業する頃は歯内療法が得意なGPになりたいと思っていました。というより当時は歯内療法のみの診療を行っている先生がいることすら知らなかったです。
・どのようにして歯内療法のみの診療を行っている先生や医院があることを知ったのですか?
私の研修先の歯科医院に月2回歯内療法専門医の先生が診療しに来て下さっていて、そこが最初の歯内療法専門医との出会いでした。
あの出会いがなければ今の自分はいないと言っても過言ではありません。
当時はほとんど歯を削ったことがないくらい経験のない私でしたが、診療の合間に事細かにいろいろなことを教えてくださり、診療中はモニターにかぶりつくように治療を見ながらアシストしていたのは本当に良い経験でした。
そこで自分も歯内療法に限定した診療をしたいと強く思うようになりました。
・歯内療法に限定した診療を目標として、そのためになにか行動を起こしましたか?
積極的に歯内療法のセミナーに参加したり、当時の勤務先の保険診療内での根管治療のほとんど全てを担当させていただきました。
また卒後3年目の時にPESCJに所属してレギュラーコースを受講しました。
・歯内療法のセミナーに参加されてpescjのレギュラーコースを受けてみようと思った決め手はなんでしたか?
当時の研修先で出会った先生がPESCJ出身の先生だったのが1番の決め手ではありますが、石井歯内療法研修会を受講して経験則ではなく、化学的・生物学的根拠のある治療を行うことのへ納得感はきっかけの一つです。
というのも臨床実習の頃から先生によって手技や術式が異なり、かなり混乱していました。
PESCJのレギュラーコースを受講すればその混乱から解放されると思ったのも理由の一つです。
・実際、レギュラーコースを受講してみていかがでしたか?
レギュラーコースを受講して知識や歯内療法においての臨床力が飛躍的に上昇しました。
論文抄読やトピックプレゼンテーションを通して能動的に知識を吸収し、実習では現役の歯内療法専門医からマンツーマンで教わることができ、特にMB2の探索や石灰化根管へのアプローチの仕方は非常に勉強になりました。
ここで吸収した知識と技術が次の日の診療にそのまま生きるので実力の向上を実感しました。
1年間非常に厳しいプログラムでしたが、今思い出しても歯内療法にどっぷりと浸かった楽しい時間だったと思います。
・先生より若い世代の先生や学生にもおすすめできますか?具体的にどのような先生に合うプログラムでしたでしょうか?
歯内療法以外の道で専門医になりたい先生以外にはおすすめしたいです。
歯内療法専門医になりたい先生にはもちろんお勧めしますし、一般診療の中で歯内療法の能力を向上させたい先生にもお勧めです。
私は1年間一般の歯科医院で勤務したあとに受講が始まったため、周りの先生と比べて一般臨床のレベルも低くついていけるか心配でしたが、受講中は講師の先生方が初心者前提で教えてくださるのでその点については問題ありませんでした。
また、私よりGP歴の長い先生に歯内療法以外の話を聞く機会もあったため早く受講できて良かったと今でも思っております。
・受講するには狭き門であったりとか、受講中は相当厳しいとウワサに聞きますが、そのような点についてはいかがでしたか?
実は研修医の時に受験して落ちてしまいました
実際に私が受験した当時は30-40人が受験して8人しか受講できないので狭き門だと思います。
厳しさに関していうと間違いなく厳しいですが、講師の方々は本当に受講生の歯内療法のレベルをあげたい一心で教えてくださりますし、懇親会では非常にフレンドリーに接してくださるので厳しい中にも愛情を感じました。
・受講中に印象に残った出来事などありましたら教えていただけますか?
私が強く印象に残っているのは石井先生とマンツーマンで行うケースディスカッションです。
ケース発表の月は講師陣、受講生に対して1症例のケースプレゼンテーションと石井先生と自分だけで行う5症例のケースディスカッションがあります。
このケースディスカッションでは自分が治療中や診査診断、患者さんに説明する時に疑問に思ったことや難しく感じた部分を石井先生と細かくディスカッションすることができます。
また、石井先生から「主訴は解決したのか?」「患者さんにはどのように説明したのか?」など治療の内容のみならず、患者さんとのコミュニケーションの部分や診査診断の整合性までアドバイスがいただけるため本当に勉強になりましたし、この経験は現在の診療にとても生きています。
・ペンエンドのレギュラーコースを終えて日常臨床を行いながら留学を決断されたとお伺いしましたが、留学を決断された理由はどのようなことですか?
1番は自分自身の行う歯内療法に自信が持てなかったというのが正直なところです。
もちろんペンエンドのレギュラーコースを1年間受講したことによって受講前では考えられないくらいの知識や技術が身につきました。
しかし、それが歯内療法専門医として胸を張って治療にあたれるレベルではないということも石井先生や尾上先生をはじめ、講師の先生方と接することで強烈に感じました。
この強烈な差を埋めるには留学するしかないとある種盲目的に突き進んだ部分はあります。
・兎にも角にも今後が楽しみですね!どのような歯内療法専門医になれたらいいなぁと思いますか?
留学をすることで臨床力の向上や知識が増えることはもちろんですが、様々な文化に触れることや様々な人と接することもすごく楽しみです。
きちんと結果の出せる歯内療法専門医になりたいと考えています。
そして患者さんからは「治療してもらってよかった」、紹介してくださった先生からは「紹介してよかった」と思っていただけるような歯内療法専門医になりたいと思っております。
・思い出に残った症例などはありますか?
診査診断の重要性を感じた症例になります。
「右下の歯を治療してもらいたい」ことを主訴に来院されました。
術前の診査では右下7番は頬側歯頚部にサイナストラクトを認め、歯髄検査では冷診査(−)電気診(−)、打診痛(+)咬合痛(違和感程度)とのことでしたので診断は歯髄壊死、症状のある根尖性歯周炎と診断しました。また頬側中央部に10mmのポケットを認めた(CT上の赤い矢印)ため、歯内ー歯周病変であるため歯周治療が必要な可能性、歯根破折の可能性があることをお伝えしました。 またCT及びデンタルにて右下6番にも根尖部に透過像を認めました。
(CT上の赤い矢印) しかし、歯髄検査をしたところ冷診査(+:3秒)電気診(+:44)、咬合痛及び打診痛も(−)でした。そのため現時点では正常歯髄であると患者さんにお伝えし経過観察することを伝えました。 その後右下7番は根管治療を行い、根管充填時にはサイナストラクト及び咬合痛、打診痛も改善しました。 その後、3ヶ月後、6ヶ月後に予後確認を行い、右下7番の根尖部透過像は治癒していきました。(CT上の青い矢印) また、術前にあった10mmの歯周ポケットも3mmになり改善を認めたため、結果として歯内ー歯周病変のプライマリーエンドであったことがわかりました。(CT上の青い矢印) そして、術前右下6番に見られた根尖部の透過像は消失しており、術後6ヶ月のタイミングで冷診査(+:3秒)電気診(+:36)と正常歯髄の状態でした。 深い歯周ポケットや右下6番の根尖部の透過像はPESCJで診査診断の重要性を学ばなければ、右下7番の抜歯や右下6番の抜髄処置をなんの疑いもなく行なっていたかもしれません。そういった意味でもPESCJでの学習は私にとって非常に有意義なものでした。
・ありがとうございます、先生は診療以外の時間でハマっていることなどはありますか?
筋トレと温泉、サウナあとはコーヒー豆を買って家で挽いて飲むのにハマっています!
・ずいぶんと多趣味のように見えますけど、ジムでトレーニングした後にご自宅でコーヒーって感じで移動はコンパクトなんでしょうか?今好きなコーヒ豆はどのような種類なんですか?
ジムは職場から徒歩3分くらいの場所にありますし、そこの近くによく行くコーヒー屋さんもあるので生活圏内に全てが揃っていてとても快適です。
今はブレンドではなく、シングルオリジンという単一の品種のみのコーヒーを好んで飲んでいます。
ウイスキーでいうところのシングルモルトのようなものです。
特に浅煎りのコロンビア産のコーヒー豆は目に入るとすぐに買ってしまいます。
農園によっても味や香りが違うため色々と飲み比べて好みを探しています。
最近では発酵の過程をウイスキーの樽で行ったり、フルーツを入れて風味をつけたりとかなり革新的なプロセスを経て作られているコーヒーが増えているので本当に楽しいです。
・浅煎りのコロンビア産のコーヒー豆は他のものとの大きな違いは何でしょうか?シングルオリジンが好き、というのとフレーバーコーヒー?が好き、というのは相反しているような気もしますがそこに特別こだわりがあるわけではない、と言う感じでしょうか?
鋭いご指摘ありがとうございます。
コロンビアのエルパライソ農園などが筆頭に取り組んでいるインフューズドコーヒーというジャンルがあります。
いわゆるフレーバーコーヒーのように焙煎後に添加するものではなく、焙煎前に漬け込むものになります。
実際にコーヒーの業界では物議を醸しており、革新的だという意見もあればコーヒー本来の香りではないからダメだという意見までそれぞれあります。
ただこれに関しては特にコロンビアの農園が取り組むコーヒーの新たな価値を見出す1つのプロセスと言えると思います。
コロンビアの農園はこのように精製発酵の過程を工夫しているところが多く、飲むたびに驚きを感じるのでコロンビアを好んで選んでおります。
コロンビアのエルミラドール農園のシングルオリジンでPink Champagne Washedという特殊なプロセスを経て作られたコーヒーがあり、とても衝撃を受けたのを今でも覚えております。
ぜひいろんな方に飲んでいただけると嬉しいです。
歯内療法ではなく、細かいコーヒーの話になってしまってすみません
・先生の解釈では、コロンビアの農園では伝統的な製法も引き継ぎながら独自の進化を遂げている部分もある、ということですが、ペンシルバニア大学歯内療法学科に通ずる部分もあるのでしょうか?もしくは通ずる部分を発見したり、コーヒーの進化の仕方とは違う進化なのか世界を牽引する大学でぜひ見極めて、日本の歯科医師に伝えて頂ければと思います。長い時間貴重なお時間頂きまして誠にありがとうございました。これからが本番ですがコーヒーブレイクを挟みながら頑張ってください。応援しております。今後ともよろしくお願いいたします。
ペンシルバニア大学で学び、いま歯内療法の最先端はどこにあるのか、私が当時PESCJで学んだことが今ペンシルバニア大学ではどのように考えられているのかしっかりと勉強してきたいと思います。