「手術」という言葉を聞いただけで、驚いてしまうかたも多いと思います。順を追って説明いたしますので、理解を深めて頂き不安をやわらげるお手伝いができればと思います。

まず重要な事は、現在お悩みの歯がルールに則った治療を受けているかどうかです。もしそうでない場合は手術ではなくルールに則った根管治療をすることで外科治療をしなくてもすむこともあります。以下は再度、根管治療を行う前に我々根管治療専門医が考慮する点をお伝えいたします。

1、根管治療の質を向上できるか?

2、見逃された根管がありそうか?

3、修復物は漏洩しているか?

4、根管系へのアクセスは可能か?

5、除去は安全にできるか?

6、自分のスキルと経験値の範囲内か?

7、器具・環境は整っているか?

以上の考慮する点で該当する点があれば、再度の根管治療の余地があると言えるでしょう。

以上の考慮する点で該当がない場合、手術の適応を検討するわけですが、なぜ歯の根の手術が必要となるのでしょうか?

理由は様々ではありますが、主に以下の理由が複雑に絡み合ってルールに則った根管治療であっても病気の原因となる細菌を減らすことができない、ということから根の手術が必要になるのです。

・根管の複雑な形態

・機械的な清掃の限界

・化学的な清掃の限界

・根の外側の感染

・根とつながっていない病変

・患者さん自身の免疫力

詳細はこちらのリンクをご参照下さい。(なぜ根管治療は100%治癒しないのか?

それでは、外科的歯内療法の代表的な術式についてご説明いたします。

歯根端切除術

簡単に言えば、根の先端を切り取り、根の先の方から形を整え、材料を詰める術式です。

この術式は近年のマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)の普及や材料、治療器具の発達により術式そのものや成功率などが変化してきています。マイクロスコープを使用しない時代の歯根端切除術では成功率59%と報告されていましたが、現在は94%と報告されており、治療の成功率は高くなっています。(Setzerら)

具体的には専門医レベルの歯内療法医がマイクロスコープを使用することにより切断した根の断面の診査がより精密に行えるようになったこと、超音波器具などの診療器材の発達による根管形成の質の向上、封鎖する材料の封鎖性の向上、が成功率向上の原因として挙げられます。

それでは、具体的に歯根端切除術の説明を(図)をいたします。術前の注意事項として必ず手術に関する十分な説明(必要に応じてCT検査実施や術後の合併症について)を担当歯科医師より受けるようにしてください。

 

歯の根の病変の断面図です。歯の根の先に病変があることがわかります。まず局所麻酔を行い、その後歯茎の切開をします。

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骨を最小限の範囲で削除し、顕微鏡下で病変をとり除きます。

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病変を取り除いた後、歯の根の先端部を切り取ります。その後、切断部に材料を詰めます。その後歯茎を縫合します。

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術後の注意点として、出血があったり、腫れてしまうことがありますがほとんどの場合心配するほどのことではありません。必要に応じて飲み薬が処方されますので歯科医師の注意事項を守りましょう。

治癒の状態は以下のようになります。失った骨も回復しています。

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以上、外科的歯内療法についてご説明させていただきました。

歯を残すための根管治療には限界があり、それを補う手段として根の手術(外科的歯内療法)があります。近年は使う道具が発達するにつれて成功率は格段に良くなってきています。いたずらに根管治療を続けることで歯が割れやすくなってしまったり、感染が広がったりしてしまうことよりもむしろ根の手術を受けたほうが「歯を残す」ということを考えた場合より患者さんに優しい選択となり得るでしょう。しかしながら「どのような環境」、「どのような方法」で行うかで成功率は大きく変わってくるため、術前の根管治療の改善の余地の有無、手術の際にはどのような方法が選択されるのか担当歯科医師と良く話し合うことをおすすめいたします。

 

執筆者:上松丈裕(PESCJ6期)