患者さん自身が毎日行う歯磨きでは、お口の中の汚れの約50%しか除去できないと言われてます。

お家で行う歯磨きでは取り切れない、残りの50%の磨き残しの蓄積による「むし歯」や「歯周病」を防ぐ、もしくはそれらの早期発見のために、歯科医院での定期的なクリーニングが強く勧められています。

 

 

 

 

 

 

定期的にクリーニングを行なったり、毎日自分自身でお口の中を清潔に保っているはずなのに、歯根の先に再度病気が出来てしまうことがあります。それはなぜでしょうか?

 そもそも歯根の中は、治療をしていない歯であればエナメル質や象牙質、治療した歯であれば被せ物や詰め物で、覆われた閉鎖空間となっています。むし歯のない健康な歯の根管の中は無菌状態です。ほとんどの歯根の先の病気はもともと無菌状態である歯根の中に、大きなむし歯などが原因で入ってしまった細菌が原因で起こります。

 

歯根の病気の治療では、歯根の中に入り込んでしまった細菌の数を出来る限り減らすことでその病気を治します。その処置には以下のことが大切となります。

・出来るだけお口の中の細菌が歯根の中に入らないような環境で処置を行う。

・適切な薬液や抗菌薬を詰めて消毒をする。

・細菌が繁殖出来るスペースを出来る限り減らすために緊密に最終的なお薬をつめる。

そのように歯根の治療を行っていても、歯根の内部の形は非常に複雑で、一度感染してしまった歯根の中の細菌の数を“完全に0” にすることは不可能と言われています(Byström & Sundqvist 1981, Dalton et al. 1998 )。精密に根管治療を行い細菌の数を減らすことで再発の可能性を低くなりますが、とはいえ100%成功するとは言えません。(参考:成功率から見える根管治療の実情)そのため、一度症状が消えたとしても“再発” してしまう事があります。

 歯根の中は閉鎖空間なので定期的なクリーニングによる歯の外側や歯ぐきのお掃除では、根の中の細菌をを減らすことは出来ません。また、歯根の先は顎の骨の中なので肉眼では見ることは不可能です。したがいまして、定期的なクリーニングを行うことは根の病気の再発を防ぐことに直接的に関係しません。

 

もちろん、むし歯や歯周病を防ぐことで、歯根の治療の後に被せた被せ物の中に、細菌が外側から新たに入り込むことを防ぐことは出来ます。

AAE(アメリカ歯内療法学会)では、4年から5年間の歯根の先の定期検診を推奨しています。このように定期的なクリーニングとは別に、歯根の治療を行った歯に対して行う定期検診も同じくらい大切なものとなります。そのような理由から、“歯根の治療後の定期検診”の受診をお勧め致します。

 

執筆者:大塚詠一朗(PESCJ9期)

<参考文献>

1. Byström A. and Sundqvist G. The antibacterial action of sodium hypochlorite and EDTA in 60 cases of endodontic therapy. International Endodontic Journal Volume 18, Issue 1, pages 35–40, January 1985 

2. Dalton BC, Orstavik D, Phillips C, Pettiette M, Trope M. Bacterial reduction with nickel-titanium rotary instrumentation.  J Endod 1998;24:763–7.