異物を全て除去する事ができない場合はありますが、治療することは可能です。

根の中に異物が残っている事を告げられると、『何がなんでもそれを取り除いて欲しい!』と思われる事と思います。

ですが落ち着いて話を聞いてください。
異物は感染源ではありません。異物そのものが病気の原因にはなりません。
また、異物が根の中に残っているような場合、それが血管を移動して体の中を巡るような事もありませんのでご安心下さい。
歯の根の中(根管)はかなり細く、0.1mm以下の太さの所もあります。また 根の管はとても複雑になっており、治療の器具器材や治療で使用する薬、歯の土台となる芯などが深く入っていて、確かに通常の治療では対応出来ない 場合もあるかもしれません。しかし、顕微鏡を併用したルールに則った根の治療では十分対応可能です。

ただ、異物を除去することは以下のように利点だけでなく欠点もあるため、 どちらがその歯にとってより有益かを考え、そもそも除去すべきかどうかを 見極める必要があります。

●異物を除去する利点、欠点

利点
異物の先の部分も根の治療を行う事ができます。

欠点
除去する為には歯質を余分に削除する必要性があり二次的に根を痛めてしまったり、将来、根が割れる(歯根破折)可能性が高くなる事もあります。
では異物が残っている根管での治療の一例を紹介します。

1.異物を除去せず根の治療を行い経過観察。(除去する必要がない場合や除去する事で残りの歯が少なくなってしまうような場合)

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(初回治療で感染度が低いと考えられる事、根の先で顕微鏡下でも目視できない事、除去を試みると切削量が増えて歯が薄くなってしまう事などから除去せずに治療を進めた例)

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(根管充填後)(症例提供:高橋宏征)

2.異物を除去し、根の治療を行い経過観察。(異物が除去可能な場合や除去しないと治療効果が十分得られないと判断されるような場合)

名称未設定
(再治療例:根の途中で治療器具が折れていました。)

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(再治療で感染度が高いと考えられる事、除去しないと破折した部位より先の治療が出来ない事、 顕微鏡下で確認できる事、歯質を過剰に切削することなく除去する事が可能と判断した事などから除去して治療を進めた例)

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(根管充填後)(症例提供:高橋宏征)

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(再治療例2 術前:治療器具が根の先を越えて残っています。)

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(術中:除去を確認した所です。)

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(根管充填後)(症例提供:湯本真幸)

3.1.もしくは2.の経過観察後に外科的歯内療法を行う。
(根の中から除去できない場合や通常の治療後に根の先の病気の改善がみられないような場合)

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(根の中と根の先から飛び出た治療器具があり、中からだけでは取り除けないと判断して外科的に除去した例)

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(除去直後)

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(除去後7ヶ月経過。根の先の病気が治っています)(症例提供:高橋宏征)

我々歯内療法認定医は、異物を除去する上での利点欠点をご説明し、患者であるあなたの希望に沿い治療方針を決定します。

歯が長持ちする事が我々の希望であり、除去する事で歯を抜かなければならないとなれば必ずしも除去をお勧めする事はありません。除去する事が歯にとって不利益になると判断された場合は、できる限りの根の治療を行い経 過観察をします。その後必要であれば、外科的歯内療法が適応となるでしょう。また除去する事がより歯にとって利益になると判断された場合は、出来る限り余計な歯を削らず除去を試みます。安全に異物を除去することは非常に困難な治療ですので、専門知識と技術を備えたドクターが歯科用顕微鏡を用いて行う必要があります。そのような場合は、歯内療法を専門とするドクターに任せた方がより確実な事と思われます。

執筆者:下山 智義 (PESCJ6期)