歯根嚢胞とは何なのか、そして鑑別するにはどのように行うのか、根管治療により治療が可能なのかをまずご説明し、最後に、ではどうしたらいいのか、を考えてまいりたいと思います。

歯根嚢胞とは

 私たち歯内療法専門医は、根の先の病気である「根尖性歯周炎」の治療と予防することを専門としています。
 「根尖性歯周炎」は、歯の内部の根管に何かしらの原因により侵入してしまった「細菌」により、歯根の先の骨破壊とともに生じる病変です。そして、この「根尖性歯周炎」の病態には、大きく分けて以下の3つがあります。

・膿瘍(のうよう)
・肉芽種(にくげしゅ)
・嚢胞

膿瘍は、細菌により強い炎症を起こして化膿している状態で、その炎症が減弱してくると肉芽種という状態に移行していきます。この膿瘍と肉芽種は、実際は両者が入り混じって見られるため、明確に区別されるものではありません。
 嚢胞は、膿瘍、肉芽種の病変が時間が経過すると、病変の拡大を防ごうと、生体の防御反応として嚢胞壁という上皮組織が病変を取り囲んだ病態と考えられています。

歯根嚢胞の鑑別方法

 

根尖性歯周炎の中で、歯根嚢胞は統計的に15%の発生率であると言われています。
では、根の先にレントゲンで病変が確認された時に、それが歯根嚢胞なのか、膿瘍、肉芽種なのか、その鑑別はどのようになされるのかですが、鑑別のための方法として、これまで以下の方法がとられてきました。

 1、電気泳動・比色法
 2、X線
 3、CT
 4、病理組織学的検査
治療前、治療中に行うことができる検査としては、1〜3が挙げられます。しかし、「電気泳動・比色法」はその有用性が低く現在は行われません。「X線」では、大きい透過像、境界が明瞭な透過像は歯根嚢胞であると過去には考えられてきましたが、その関係性は現在では否定されています。「CT」では、若干の傾向は見出せるものの、確定的な診断には至りません。唯一、確定診断が可能な検査は、病変を外科的に採取し顕微鏡にて直接観察できる、「病理組織学的検査」のみです。
 つまり、根の先に病変が確認された時に、それが歯根嚢胞なのか、膿瘍・肉芽種なのか、それは治療前、治療中にはわからないということです。

治療法

 

治療法  根の先に病変が確認された時に、それが歯根嚢胞なのか、膿瘍・肉芽種なのか、それは治療前、治療中にはわからない、ということはご理解いただけましたでしょうか?  基本的には、どの病態も根管の内部に侵入してしまった細菌が原因です。ですので、その原因を除去することができれば、治癒に導くことができると考えられています。つまり、「ルールに則った根管治療」を行えば、治癒させることも可能であるということです(「ルールに則った根の治療」について」参照)。

 つまり歯根嚢胞の治療法も、膿瘍・肉芽種といった病態の治療法と変わりません。

嚢胞は他の病態と比較して、根管治療が奏功しづらい病態であると考えられていますが、根尖生歯周炎はその病態に関わらず、根管内に侵入してしまった細菌を全て除去することは、根管の複雑な形態、機械的な清掃の限界、化学的な清掃の限界、根の外側の感染、根とつながっていない病変、患者さん自身の免疫力など様々な理由から100%治癒させることは難しいと言わざるを得ません。しかし、根管治療で奏功し得なかった場合でも、外科的歯内療法により治癒させることが可能なことが多くあります。(「外科的歯内療法(歯の根の手術)が必要と言われました。手術とはどのような治療法なのでしょうか?」参照)

 

どうしたらいいのか?

1、治療前に、病変がどの病態にあるのかはわからない。
2、歯根嚢胞でも、通常の根管治療により治癒する可能性がある。

上記2点より、「根尖性歯周炎」で治療が必要となったら、まず基本的には根管治療を行います。その結果、治癒しなかった場合は外科的歯内療法へ移行します。
根管治療では治らないと言われたとのことですが、レントゲンでは歯根嚢胞かどうかはわからないため、難治性の根尖性歯周炎を歯根嚢胞と診断されたのかもしれません。
 歯根嚢胞といえど、ルールに則った根管治療、外科的歯内療法で十分対応は可能であると考えられます。

 

 

 

 

 

 

執筆者:池田洋之 (PESCJ8期)