外科的再治療を選択することもありますが、通常は非外科的な根管治療を検討します。

再治療ではまず、非外科的な通常の根管治療で対応できるかどうか検討します。そして非外科的歯内療法では対応できない場合、外科的歯内療法を検討します。

  再治療 → 非外科的歯内療法 → 外科的歯内療法

条件にもよりますが

一般的に再治療の非外科的歯内療法の成功率は約40~80%

(Gorni FG, J Endod. 2004)

マイクロスコープ下で行う外科的歯内療法の成功率は約90%

(Setzer FC, J Endod. 2010)

と報告されています。ここで疑問を持たれた方もいるのではないでしょうか。

「成功率の高い外科的歯内療法を最初から選択できないのか?」と。

これらの問いについて以下の目次に沿って解説していきます。

①「最初に非外科的歯内療法を検討するのはなぜか?」
②「外科的歯内療法を最初に選択する方が適切な時とは?」

 

①「最初に非外科的歯内療法を検討するのはなぜか?」

根尖性歯周炎の原因は「細菌」です。

それゆえに細菌感染部位を特定し、除去することが大切です。

非外科的歯内療法にて改善の余地があるのかどうかを検討すべき代表的な重要項目として以下が挙げられます。 

      

・歯冠漏洩をしていないか

 

 

 

 

 

 

冠が合っていないことが確認できます。

 

 

 

 

 

 

 

非外科的な歯内療法にて治療を行いました。(高橋宏征先生提供)

→虫歯がないか、被せ物に問題はないかなど歯冠からの細菌感染が疑われる場合は、まず感染経路を断つことが重要であり、非外科的に介入します。

・見落としている根管はないか

 

 

 

 

 

 

 

未治療と思われる根管が認められます。

 

 

 

 

 

 

過不足なく治療を進めることができました。(新谷武史先生提供)

→見落としている根管が細菌感染源である場合、根管経由からの細菌除去、つまり非外科的な介入が第一選択となります。

・根管内の全体の汚染度が高い場合

 

 

 

 

 

歯の中の汚染が認められます。

 

 

 

 

 

 

歯の中を綺麗にできたことが確認できます。(新谷武史先生提供)

→外科的に感染除去を達成できるのは根尖部に限るため、可能な限り根管経由からの感染除去を試みます。

・根尖部へのアクセスは可能か

 

 

 

 

 

 

 

根管から飛び出てしまっている異物の存在が確認できます。

 

 

 

 

 

 

 

通常の非外科的歯内療法によって治療ができました。(下山智義先生提供)

→根管形態が自然な状態で保存されているかどうか。根尖部付近に破折した器具などがないかどうか確認します。

・金属築造体(ポスト)の除去は可能か

 

 

 

 

 

 

 

 

かなり長いポストが確認できます。

 

 

 

 

 

 

 

 

丁寧にポストの除去を行い通常の非外科的歯内療法によって治療ができました。(小板橋徹先生提供)

→安全に除去できるかどうか検討します。

根管経由による歯内療法の限界は多くの基礎実験から報告されています。しかしながら外科的歯内療法は非外科的な根管治療の代わりになりうる処置ではなく、上記から示されるように細菌感染を除去する上ではまずは非外科的に解決できないか検討する必要があり、外科的歯内療法が決して第一選択ではないことがわかります。

ただし状況によっては、外科的歯内療法を最初に選択する方が適切な時があります。

ではそれはどのような時でしょうか。

② 外科的歯内療法を最初に選択する方が適切な時とは?

 

・穿孔(せんこう)や破折器具等の問題があり、外科処置以外では問題を解決できない時

 

 

 

 

 

 

根管の中と外に破折した器具のようなものがみられます。

 

 

 

 

 

 

治療後1年。治癒がみられます。(高橋宏征先生提供)

根管内を拡大中に器具操作などで根管に穴があいてしまうことを穿孔と言います。細菌への栄養供給路を遮断するため、穴は薬剤で封鎖しないといけません。部位にもよりますが、根尖部付近の穿孔は操作性の問題から対応が難しく、外科的に穿孔部位を切除することになります。

・太く長いポストが入っている時

 

 

 

 

 

 

 

 

ポストが長いのと、過去の外科的歯内療法の失敗が確認できます。

 

 

 

 

 

 

 

 

外科的歯内療法のやり直しにより治癒が確認できます。(高橋宏征先生提供)

ポストを削って除去する際に器具がポスト先まで到達しないことや、除去時に歯が破折することが考えられるので、外科的歯内療法が第一選択となる場合があります。ただし根管内の汚染度が高ければ可能な限り非外科的歯内療法を優先すべきです。

・補綴物の除去が必要ないと判断される時

 

 

 

 

 

 

 

 

ブリッジの支えの歯の根の先に病気ができています。

 

 

 

 

 

 

 

 

被せ物には問題なかったので外科的アプローチにて治療しています。(高橋宏征先生提供)

長いブリッジを支えている歯に再根管治療が必要な場合、連結している被せ物を仮歯にしてから非外科的歯内療法を行い、治療後最終的に被せ物を新しくする必要があります。被せ物に自体に大きな問題がなく、また根管内の汚染度がそこまで強くない場合に限り、最初から外科的歯内療法を介入することは可能です。

・歯の破折が強く疑われる時(診断的外科処置)

 

 

 

 

 

 

 

外科的アプローチで破折を確認しています。(小板橋徹先生提供)

歯が破折するとそこに限局的な歯周ポケットができます。破折線を肉眼で判別できない場合、または歯茎に隠れて見えない場合は外科的に歯肉を剥離して確認を行うことがあります。

外科的歯内療法は非常に予知性の高い術式です。ただし、外科的歯内療法は非外科的歯内療法では解決できない状況において選択されるべきです。

外科的歯内療法は非外科的よりも患者への侵襲性(しんしゅうせい)が高く、また根尖部を切除するためその分、歯を支える支持組織も少なくなります。

現代ではマイクロスコープによる外科的歯内療法の術式が確立されその適用範囲は広がりつつありますが、再治療の第一選択としては常に根管治療によって根管経由からの細菌除去を試みる努力が重要であり、それよりも患者利益があると判断した場合に外科的介入を考えるべきです。

執筆者:白瀬浩太郎PESCJ9期)

<参考文献>

Setzer FC, Shah SB, Kohli MR, Karabucak B, Kim S. Outcome of Endodontic Surgery: A Meta-analysis of the Literature—Part 1: Comparison of Traditional Root-end Surgery and Endodontic Microsurgery. J Endod 2010;36(11):1757-1765.

Gorni FGM, Gagliani MM. The outcome of endodontic retreatme nt: a 2-yr follow-up. J Endod 2004;30:1–4.

Karabucak B, Setzer F. Criteria for the Ideal Treatment Option for Failed Endodontics: Surgical or Non-Surgical? Compend Contin Educ Dent 2007;28(7):391-7; quiz 398, 407.