1回の治療時間が長いのは、主に以下のような理由があります。

  ①無菌的な治療環境を整えるための時間

  ②感染源を見落とさないための時間

  ③全ての根管を可及的に見つけるための時間

  ④効果的に殺菌するために正確な処置をおこなうための時間

  ⑤治療と治療の間の細菌感染のリスクを減らすための時間

 

①無菌的な治療環境を整えるための時間

 私達歯内療法専門医が行っている根管治療は、歯の中の炎症が根の周囲に広がるのを予防すること、根の周囲の炎症を抑え治癒させることが目的です。

 これらの炎症の原因は細菌であることが明らかにされています。

 したがって根管治療を行う上で最も大切なことは、無菌的な治療環境を整え、治療中に根管のなかに細菌が入らないようすることです。

 ・無菌的な治療環境とは?

お口の中にはたくさんの細菌が存在しますが、治療中にこれらの細菌を根の中に入れないために、

 1)ラバーダムというゴムのシートを用いて歯を隔離します。

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 2)感染歯質を徹底的に除去します。 

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 3)歯の中への唾液の侵入を防ぎ、治療に使用する薬がお口の中に漏れないように壁(隔壁)を作成します。

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 4)ラバーダムと歯の隙間を埋め、歯の周りを清掃消毒します。

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 ラバーダム防湿を正しく行うことで、唾液中の細菌が歯の中に入るのを防ぎ、治療に用いる消毒薬が口の中に漏れないようにし、万が一器具が落ちても、喉の奥に入ってしまったり誤飲等の事故を防ぐ非常に重要な役割を果たします。ラバーダム防湿をするための時間が必要となります。

 ②感染源を見落とさないための時間

 私達は必ずマイクロスコープを用いて根管治療を行いますが、裸眼では見えないものがはっきりと見えるようになります。例えば細菌に感染した歯質や神経の取り残しなどです。裸眼で感覚的に治療するのとは異なり、しっかり綺麗になっているか確認しながら処置するため、どうしても時間がかかります。   

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 ③全ての根管を可及的に見つけるための時間

 歯の根の中はとても複雑な形態をしています。裸眼では見逃されていたような穴や網目状のつながりもかなりしっかりと見えるようになるため、これらの処置に時間が必要になります。さらに通常であれば見逃されてしまうような隠れた根管も可及的に見つけ全ての根管の中を消毒するために、時間が必要になります。     

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(未治療の根管を発見したケース)

 ④効果的に殺菌するために正確な処置をおこなうための時間

 効果的な殺菌についてご説明します。これは適切な根管拡大と洗浄を併用して殺菌を行うことです。洗浄を確実に行うには適切な根管拡大が不可欠です。適切な根管拡大とは、可及的に細菌を除去する形成、十分な洗浄を行えるような形成、緊密に根管充填が行える形成が挙げられます。

 根管が狭すぎると感染した部分や細菌の取り残し、洗浄の薬が行き届かない、根管充填が不十分になりやすい等、問題がありますし、逆に根管を広げすぎることは歯質が薄くなり、治療した歯が悪くなることに繋がります。

 適切な根管の太さは個々の歯によって違いますので、根管形成の前の(広げる前の)太さをしっかり計測し、根管形成を行います。

 また、根の先端の穴を破壊してしまうと治療した歯が悪くなることがわかっているので、歯の長さの測定をし、適切な根管の長さで形成することも非常に重要です。

 この根管の太さや長さの計測にも時間がかかりますし、拡大しながらも洗浄を行います。洗浄もただ洗うだけと、根管全体に行き渡るように超音波の振動をつかいながら液を還流させるのでは、細菌を減らす効果が明らかに違います。また洗浄の効果を高めるためには推奨される適用時間というものもあります。

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図:根の先端までの長さと太さを計測し、レントゲン撮影をして確認をします。それを基に拡大を行います。根の先端の穴を破壊しないための配慮として、先端から-1mmの位置を設定しています。こういった細かい配慮をしながらミリ単位の作業をします。拡大形成が終えたらもう一度レントゲン撮影をして確認をし何度もチェックを行いながら丁寧に治療を行いますので時間が必要となります。

 ⑤治療と治療の間の細菌感染のリスクを減らすための時間

 最初にお話したように、根の先の炎症の原因は細菌です。唾液中や歯の周りには常に沢山の細菌が存在しています。治療中には密封性の高い仮蓋を分厚くつめて過ごしていただきますが、あくまで仮蓋であり、治療終了後に充填する歯に接着する材料と比べると、密封性は劣ります。そのため、治療回数が多くなると、治療と治療の間に再感染するリスクが高まります。

 治療と治療の間には、薬を根の中に入れて機械的に取りきれない細菌を殺菌しますが、この回数が増えても殺菌力に差がないこと、消毒薬を置く期間が長くなると歯がもろくなることがわかっており、可及的に治療回数を減らすことが大切で、そのために1回の治療時間を長くとって処置を行っているのです。

 余談ですが、治療と治療の期間が空いてしまったり、治療の中断は再感染のリスクが高まりますので予約の時間を守るようにしてください。

 以上のように、無菌的な環境を整え、徹底して感染源を除去し、再感染のリスクを下げ、治療を成功に導くためには、1回の治療時間を長くせざるをえないのです。

 1回の治療時間が長いことに不安があるかもしれませんが、治療時には麻酔をして無痛な状態で行いますし、開口を補助し保持するサポートも行いながら治療をしますのでご安心ください。1回の治療時間は長いと感じるかもしれませんが、治療回数は少なくて済むので、トータルの時間はむしろ少ないといえるかもしれません。