痛みの有無だけで、健康か健康でないかを判断するものではありません。痛みがないにもかかわらず、歯科医師が根の治療(根管治療)を勧めるのにはそれなりの理由があると考えられます。従って健康でない歯あるいは歯根、と診断されたのであれば、やはり治療は必要であると言えるでしょう。
例えば人の体でも痛みがなくとも極めて重大な病変が進行している時があるように、歯科も例外ではありません。

根に発生する病変とは細菌感染により引き起こされます。その原因としては…

①むし歯からの細菌感染により、歯根に存在する根管を通って根尖(根の先端付近)に病変が出来る
②過去にその根管治療を行なったが、なんらかの原因で再感染を起こし、根尖に病変が出来る
③歯根にひび割れが起こり、ひびに沿って感染を起こし、根の周囲に病変が出来る
④歯が歯周病に罹患し、歯周病による感染が根の根尖まで達した結果、根の周囲に病変が出来る

等が考えられ、これらの原因(細菌感染)を除去しないことには残念ながら自然治癒しないのです。これらの原因を取り除く方法は根管治療か抜歯となります。したがいまして根管治療せず放置しておくことは「今」痛みがなくとも「将来的に」痛みや腫れが起きる可能性が高いのです。また進行のスピードは人それぞれだとは思いますが、炎症は徐々に進行しますので放置しておくことは抜歯の可能性が高くなることと思われます。

参考例:「急に歯肉が腫れたため救急来院」

下の写真は治療の途中で痛みがなくなり、その他自覚症状がなかったため放置してしまった患者様のレントゲンですが、矢印のところに炎症による骨の吸収像(骨が溶けている)の存在が伺えます。

治療前

この症例では歯内療法専門医により治療が行なわれ痛みやその他自覚症状や腫れは消失し、半年後には炎症による骨の吸収(骨が溶けている)も治まり、レントゲン上でも治癒していることが観察できます。

根充直後

治療後

ですが、歯内療法専門医も必ずしもこのような症例を救えるわけではありません。もちろんこのような病変を引き起こしてしまった歯に対しても、治療の成功率を維持し歯の延命に寄与するよう日夜努力はおこなっておりますが、別コラムの「成功率から見える根管治療の実情」をお読みいただければ分かりますように治療前に

「レントゲン上に病変が見えない」VS「レントゲン上に病変が見える」
では「病変が見えない」方が治療の成功確率が高い。

「痛みがない」VS「痛みがある」
では「痛みがない」方が痛みが出にくく、不快な思いをせずに済みやすい
という結果がはっきりと示されております。

したがいまして、専門家の立場からは、コラムをお読みの皆様にはどうか歯や歯の根が重篤な状態になってしまい救う手段が無くなる前に、歯の病変を放置することなく正しく原因を取り除いて頂きたいと考えております。

執筆者:根井 俊輔 PESCJ5期