A:痛みがあるかどうかが神経を取る取らないの根拠になる訳ではありません。

 

虫歯は細菌による感染症です。虫歯を治療する為には、細菌感染が起こっている部分を取らなくてはいけません。ですので、痛みがなくても、神経の深くまで細菌による感染が広がっている場合や、細菌感染により神経が死んでしまっている場合は神経を取る歯の根の治療が必要になってきます。

逆に、痛みがあったとしても「冷たい熱いなどの一時的な痛み」の場合は、その原因となっている虫歯などの刺激を除去してあげると痛みが治まり、神経を残すことができる可能性もあります。

 いずれにせよ、痛みがあるかどうかでなく「感染の範囲がどこまで及んでいるか、神経の中にまで細菌感染が広がっているか、神経がどのような状態か」が神経を残せるかどうかを判断していく上で非常に重要になってきます。

 

では、どのようにして神経の状態を調べていくのでしょうか。歯の神経は周りを硬い組織に囲まれているため、きちんとした診断をつけることが非常に難しいのです。歯に対するいくつかの診査や、痛みの既往など色々な要因を織り交ぜて、神経が健康な状態かどうかを判断していきます。

 

 

 

 

 

 

例えば、周りの歯と冷たいもの、熱いものに対する反応を比べたり、歯を叩いてみたりなど、いくつかの検査を組み合わせて、他の健康な歯との反応を比較したり、今までに痛みが出たことがあるかどうか、など痛みの既往も神経の状態を判断していく上で、非常に重要な診断材料になってきます。

「熱いもの冷たいものでしみるが、すぐに治まってくる。」

「熱いもの冷たいものですごくしみて、しばらく痛みが続く。」

「以前すごく強い痛みがあったが、今は全然痛くない。」

など、しみるや痛いなどの反応も、中の神経の状態によって、感じ方や痛みの強さなども変わってきます。

単純に今現在痛みがあるかどうかだけが、神経を取るかどうかの判断材料になるわけではありません。

「前にすごく痛い時があったが、今は全然痛みがない」という場合、細菌の感染により神経に炎症が起き、強い痛みが出たが、その後、感染により神経が死んでしまっていて、一時的に痛みが治まっているだけの可能性もあります。

そのような状態では、今現在痛みがなくても、根の中で細菌による感染が起きているので、根の中にいる細菌を減らす為に、根の治療が必要になってきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、歯や歯の周りが痛く感じたり、痛みの既往があっても、実際は歯に痛みの原因がなく、歯以外に原因があり痛みを感じていた(非歯原性疼痛)可能性もある為、一概に患者さんが今までに強い痛みを感じたことがあるかどうかということだけで神経を取るか取らないが決まるわけでもありません。そういった非歯原性疼痛との識別をしっかりとする上でも術前の診査は非常に重要になってきます。

まずは様々な歯の診査や痛みの既往の有無など、いくつかの要因を踏まえてきちんとした診断を受けること、出来るだけ正確に神経の状態を診断して治療を行なっていくことが歯や歯の周りの組織を残していく上で非常に重要になってきます。

 

執筆者:佐藤紘子(PESCJ10期)

 

<参考文献>

1)Seltzer S. Classification of pulpal pathosis. Oral Surg Oral Med Oral Pathol 1972;34:269-87.

2)Jafarzadeh H, Abbott PV. Review of pulp sensibility tests. Part II: electric pulp tests and test cavities. Int Endod J. 2010 Nov;43(11):945-58.