以前の治療はどういう状況で行われたのかわかりませんが、掻爬のみの手術(根尖掻爬)と専門医が行う外科手術は違います。
根の先の病気は、歯根の内外の残存した細菌の感染が主な原因です。
手術をしたのにも関わらず再発した場合、以前の外科手術の失敗がどこにあるのか詳しく診査診断を行い、歯冠部(歯の出ている部分)にむし歯の取り残しや修復物の適合に問題がないか等、確認していきます。
通常の根の治療自体に問題がなければ外科手術の適応、となります。
ここで振り返りますが、そもそも手術をする、ということは通常の根管治療では解決できない状態だと思います。
理由としては根管の複雑な形態で通常の根の治療自体に限界があること、取りきれない細菌感染が存在すること、根の外側で細菌感染(根尖孔外感染)を起こしていることなど、様々です。
我々の外科的歯内療法では、根尖性歯周炎の原因である歯根への細菌感染を除去することを目的として、歯根の先端の一部(3~4mm)をマイクロスコープ下で切除します。また切断面を精査して通常の根管治療で解決できなかった問題、外科的手術で解決できない問題(破折など)を確認し、根の先から根管に沿って形成を行い、特殊なセメントにて詰め物をします。
根の先を切除 (根尖切除)は、以下の理由により必要です。
・通法の根管治療では、根管形態の複雑性から細菌を完全に除去することは困難
・細菌が残存しやすい側枝や根尖分枝、イスムス、フィンが特に多いのが根の先3~4mm
・根の外側まで感染が広がっていた場合、除去できる
切断面を精査することで、以下の利点があります。
・裸眼では確認できない汚染部や未治療部をマイクロスコープの強拡大で確認
・外科治療のステップごとの確認が可能
切除してから根管内を切削 (逆根管形成)し、適切な材料で充填することで、残留した細菌の存在を埋葬し不活化が期待できます。
掻爬も行いますが、掻爬については病的組織や異物の除去が目的です。しかし根尖性歯周炎の原因は細菌感染であって肉芽組織ではないので、掻爬のみでは不十分と言わざるを得ません。
まとめると、外科的歯内療法においても残存した細菌の除去が目的なので、
・根の先の一部切除
・切断面の精査
・根の先から切削し適切な材料で修復
というステップを欠かすことなく行うことが必要です。
掻爬することで異物の除去、手術中の出血を抑制することはできますが、それだけで病気が治るわけではありません。もし、以前の手術が掻爬のみであった場合、専門医の外科治療によって治癒する可能性があるかもしれません。