A : 根尖性歯周炎は「関わる細菌の数や種類」が最も関連し、個人差がありますがある一定数(閾値)以上になると発症します。したがって関わる細菌の数や種類を閾値以下に根管治療で減少させることができれば治る、と考えられています。

①根管治療による細菌除去の限界

根尖性歯周炎は感染症であり、原因は根管内に存在する細菌です。よって細菌除去が根尖性歯周炎の治癒へとつながります。細菌除去の方法は根管治療の原則を遵守して

・機械的拡大・化学的洗浄・根管貼薬

の3つの手段で行われています。

しかし3つの手段を用いて根管内部から全て細菌が除去できれば理想的ですが、実際には細菌数を0にすることは出来ません。(参考コラム  なぜ根管治療は100%治癒しないのでしょうか?

その理由として

・複雑な根管形態

・細菌学的な問題

が挙げられます。複雑な根管形態は3つの手段を用いても細菌の潜む住処の全てを除菌することを阻み、細菌学的にも薬剤が効かない菌が存在したりするからです。

②根尖性歯周炎と閾値(いきち)

 では細菌数が0にならないと根尖性歯周炎が治癒しないのであれば、治癒の可能性も0となりますが、実際には治癒している現実があります。

なぜ発症したり治癒したりするのか、それには

細菌数がある一定数(閾値)以上に増加した場合に、根尖性歯周炎が発症する

からです。

(実際には細菌叢の比率や免疫反応など複雑なメカニズムで病気の発症は起こるもので、個人差はありますが、今回は一般的な話として細菌数に焦点を当てています。)

 

 

 

 

 

 

根尖性歯周炎が発症するためには、いくつかの種類の細菌がある程度の細菌数に達する必要があります。細菌数が少ないと、根尖性歯周炎としての明確な所見・症状として現れません。

厳密に言えば、感染している場所に存在する細菌の種類、細菌の数、さらには人体の感染に対する抵抗力も根尖性歯周炎の発症にも関係してきますが、根管治療にとってもっとも重要なのは細菌の数ということになります。

細菌数と閾値と根尖性歯周炎の関係をわかりやすく表記した図があるので紹介します。

 

 

(Siqueira JF et al,  JOE 2008)

A:細菌数は増加しているが、まだ閾値に達していない

B:細菌数の増加が閾値に達したので、根尖性歯周炎が発症

C:根管治療を行なっても、細菌数が閾値以下にならなければ根尖性歯周炎は持続

D:根管治療により細菌数が閾値以下に減少したため根尖性歯周炎は治癒

③根尖性歯周炎を発症させないために

細菌数が増えると根尖性歯周炎が発症するので、大前提として初回の根管治療(抜髄処置)・再根管治療に関わらず

無菌的環境を徹底した条件下で、根管治療が確実に行われること

が最も大切なことです。

次に

無菌的環境で根管治療を終えたら、良好な状態を維持するために適切な封鎖が確実に行われること

機械的拡大、化学的洗浄、根管貼薬を行なって、細菌数を閾値以下にまで減少させた後はその状態を維持して再度閾値以上に細菌数を増加させないよう適切な封鎖(根管充填と歯冠補綴)を行う必要があります。(参考コラム :根の治療の最後に「根の中を詰めました。」と言われました。封鎖する理由を教えてください。また、どのような材料の薬が用いられたのですか。)

・根尖孔や根管口といった細菌の出入り口となりうる交通路の封鎖

・根管内から除去できなかった細菌や刺激物質の埋葬(entomb)

感染経路を断つこと、根管内に残ってしまっている細菌数をこれ以上繁殖し増加させないために行います。根管充填だけでは封鎖が不十分ですので、歯冠補綴も欠かせない要素となります。

細菌を0にしなくても治癒に導ける理由、あるいは逆に一度治癒したように見えた根尖性歯周炎が再び発症する理由もご理解いただけたと思います。

 

繰り返しになりますが、根管内に一度感染した細菌は全ては取り除けないので、一番最初の初回の抜髄治療が重要です。また不幸にして感染した場合でも「根尖性歯周炎を発症させないために、再根管治療によって一定以下の細菌数に可能な限り減少させる」のが根管治療のゴールの概念ということになります。

歯内療法専門医であればこの概念を知ってるのはもちろんのこと、確実に概念を実施するよう日々の診療で取り組んでおりますので、根管治療でお困りの方は一度ご相談ください。

執筆者:水上克PESCJ9期)

参考文献

石井宏 世界基準の臨床歯内療法 医歯薬出版 2015年第一版

Siqueira JF Jr, Rocas IN.Clinical implications and microbiology of bacterial persistence after treatment procedures. JOE 2008 Nov;34(11):1291-1301