場合によっては可能です。ただし、奥歯の場合は、被せ物を入れることで歯を長持ちさせる可能性が高くなります。

根の治療が終わった後、「この歯を削って被せ物を入れましょう」と言われた経験があるかもしれませんが、そもそも何故被せ物が必要なのでしょうか?
自分の歯は少しも削って欲しくない、削ってしまうのは勿体ないと感じる方が多いと思います。

どんな時に被せ物が必要なのか?
被せ物が必要な場合は大きく分けて2つあり、1つは残りの歯が少なくて被せないと歯が使えないケースです。失った歯を補うために「コア」と呼ばれる土台を作り、被せ物を作ります。矯正治療や外科的処置を併用することもあります。
もう1つは一見残りの歯が十分にあっても、咬む力で歯が割れてしまうリスクの高いケースです。奥歯は咬んだ時に1本あたり50~70kg程度の力がかかると言われており、健康な歯でも咬む力で歯が割れることがありますが、根の治療をした歯は更にそのリスクが高くなります。

根の治療をした歯はもろくなるのか?
以前は根の治療で神経を取ると、歯自体が脆く割れやすくなると考えられていました。しかし実際には、神経を取っても歯自体の強さは変わらないことが、実験によって明らかになっています。
ただ、神経を取ったかどうかに関わらず、むし歯や治療によって歯を削り、歯が薄くなれば当然割れやすくなります。歯を一切削らずに歯の神経を取る治療は行えないため、結果的には神経の無い歯(つまり根の治療を行い神経を取った歯)は、神経のある一切削られていない歯に比べると割れやすい傾向にあると言えます。そして咬む力で歯が割れると、割れ方によっては歯を残す事が困難になります。

歯内療法専門医の視点から、歯を残すことを第一に考えると、割れるリスクの
高い場合は歯を必要最小限削り被せ物を入れることで、歯の弱体化と破折リスク
を軽減する治療をお勧めします。

なぜ被せ物が必要なのか?
神経の治療後、被せ物をしない歯は、被せ物をした歯と比較して6倍歯を失う
リスクが高くなります。
また神経を取る治療を受けた150万歯の8年後を調べた研究では、97%は抜歯
されずに生存していたが、3%は抜歯が必要になり、その抜歯が必要になったうち
の85%が被せ物をしていなかったとの報告もあります。

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また、抜歯になった197本中、神経の治療を受けた歯65本を調べ、被せ物がしてある歯の喪失率は、神経の治療を受けていない歯と同じとの報告もあります。
以下の実験でも、根の治療後に、歯科用金属で詰め物をしたもの、歯を部分的に歯科用金属で覆ったもの、歯全体を金属の被せ物で覆ったものを用意しそれぞれに力を加えたところ、歯全体を金属の被せ物で覆ったものが最も強度が高かったと報告されています。

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これら一連の研究結果より、一見歯を削ることが勿体ないように思えても、少なくとも奥歯は被せ物をすることにより歯を失うリスクを軽減する事ができると言えます。
前歯は残りの歯の量により被せものが不要なケースがありますので、担当の歯科医師と被せ物を入れた場合のメリットとデメリットをよく相談して決める必要があります。

執筆者:小板橋 徹PESCJ6期)