根管治療(根の治療)に必要な「無菌的な環境」を整えるために非常に重要な役割を担っているからラバーダムは必要です。

初めてお聞きになった方もいらっしゃるかもしれません。ラバーダムはゴムのシートで治療する歯だけを見えるように出して、その他の歯や舌はラバーダムの下になるようにします。その歴史は古く、1864年にニューヨークのDr.Barnumにより、ラバーダムは歯科治療に使われたとのことです。

ラバーダムの役割は、

①治療する歯へ唾液が入らないようにしたり、

②薬液から粘膜を保護したり、

③舌をよけて思わぬ事故を防いだり、

④器具を誤って飲み込むのを防止したり、と色々あります。

なかでもラバーダムが根の治療(根管治療)での重要な役割は、 ①治療する歯へ唾液が入らないようにしたり、②薬液から粘膜を保護したり、 と無菌的な状態での治療を可能にするということです。

口の中には口腔内常在菌といって、様々な細菌が歯の表面や唾液、舌などに存在するので、治療する歯を隔離して歯の中へ細菌が入らないようにするためラバーダムが必要なのです。徹底的に隔離するためにシートと歯の隙間も封鎖し、治療する歯とラバーダムのシートをしっかりと消毒していきます。

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 なぜ、歯の神経の治療では無菌的な状態での治療が必要なのでしょうか?

1965年にKakehashiらは、通常のラットと細菌の全くいないラットを用いて、人為的に歯に穴をあけて神経を露出し、経過を観察しました。通常ラットでは歯の神経も死んでしまい歯の根の先にある骨がとけたのに対し、無菌ラットでは神経は死なずに穴の部分が少し修復されたということがわかりました。

つまり、神経の病気の原因は細菌であるということが示されたのです。

上記の事から根の治療(根管治療)では、むし歯によって歯の中に入ってしまった細菌をできる限り除去すること、治療によって新たな細菌を持ち込まないことが非常に重要であるということがわかります。細菌がまだ入っていない歯の治療よりも、細菌が歯の奥まで入ってしまった歯の神経の治療は、難しく治りにくいことがわかっています。(なぜ根管治療は100%治癒しないのでしょうか?)を参照してみてください。

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また根管の中を洗浄するために用いる薬液は刺激性や毒性が多少あり、粘膜に付いたり飲み込んでしまう事故をラバーダムは防ぐ役割もあり、根の治療(根管治療)において非常に重要です。

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世界的には日本をはじめとしてヨーロッパ・アメリカのガイドラインで、歯の神経の治療にラバーダムは必須であると明記されています。

さて、実際に神経の治療が必要になって、ラバーダムをすることになったとき問題となるのは、残っている歯の状態です。

むし歯によって通常の歯よりも高さがなくなってしまっている場合、ラバーダムがかけられないかもしれません。そのときは、プラスチックやセメントなどの材料で壁をたてる方法や(隔壁)、歯を引っ張ったり(挺出)、歯肉の整形をするなどして歯の長さを確保する方法などを組み合わせて、ラバーダムをかけられる状態にします。

4→     5隔壁:症例提供 李光純先生

67矯正的挺出:症例提供 新谷武史先生

まれにむし歯を一部残してラバーダムをかけられるようにするケースがありますが、これまで述べてきたとおり、無菌的な環境が治療の成功を左右する事ですので例えラバーダムを使用したとしてもむし歯を残した状態では本末転倒と言わざるを得ません。

ラバーダムの治療上の注意点としては、ラバーダムは歯にリングをかけて(クランプ)装着するので個人差はありますが、少し圧迫感や痛みを感じることもあります。治療中は麻酔をしますので、気にならなくなりますが、治療後は少し歯茎が痛む場合もあります。また、息苦しさを感じる場合もありますが、鼻の部分はあいていますのでゆっくりした呼吸を心がけて頂ければ解消されます。ゴムのアレルギーの方は事前に申し出てください。

今回は、ラバーダムを用いた無菌的な神経の治療の重要性・ラバーダムの実際についてお話しさせていただきました。もし、神経の治療を勧められたのでしたら、ぜひラバーダムをした上で、ルールに則った根管治療を選択していただきたいと思います。

執筆者:生澤佑子  PESCJ6期